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現在取り組んでいる研究分野

化学生態学 (Chemical Ecology)

自然界には人間の英知を遥かに凌駕する特異な化学構造の有機化合物が存在し、生物に対して切れ味鋭く作用する。このような天然有機化合物を研究対象とし、最前線の研究手段を駆使して生命現象の理解と、基礎概念の構築を目的に研究を展開している。


タコクラゲ

褐虫藻

着底変態したサンゴ幼生

カワラタケ

遺伝子資源学 (Genetic Resources Research)

自然界に存在する生理活性天然物は、真の生産者が不明なものが多く、その生合成経路も不明なものが非常に多い。そこで、有用物質を生産している渦鞭毛藻やクロイソカイメン共生微生物のメタゲノムからこれらの生合成系遺伝子の探索を行っている。


クロイソカイメン

渦鞭毛藻
Symbiodinium sp.

酵素と反応機構 (Reaction Enzymology)

ベックマン転位を触媒する酵素など、化学触媒を超越する新規酵素の探索に挑戦している。またポリケチド合成酵素など、巨大炭素鎖分子生合成に関わる重要な酵素を探索している。


酵素結晶

オワンクラゲの発光タンパクGFP

私たちの研究背景


上村 大輔(Daisuke UEMURA)

自然界には人間の英知を遥かに凌駕する特異な化学構造の有機化合物が存在し、生物に対して切れ味鋭く作用する。このような天然有機化合物を研究対象にし、最前線の研究手段を駆使して深遠なる生命現象の理解を目指すとともに、基礎概念の構築を目的に研究を展開している。わが国における天然物有機化学は絶えず世界から注目され、たとえば、フグ毒テトロドトキシン、海ホタルルシフェリンの研究はその中でも特記されるものであった。伝統的学問分野の中核として研究を進めることによって、画期的な自然理解達成を実現するとともに、未来に向けての方向性を示したい。

本研究室の具体的な研究成果として、腔腸動物毒パリトキシンの 構造研究がある。パリトキシンとは腔腸動物イワスナギンチャクに含まれる猛毒で、特殊なタンパク質を除けば現在知られている最強の毒物の一つである。その 構造は、多糖、タンパク質のようないわゆる生体高分子を除けば正確な構造式で表せうる最も大きな分子でもある。構造決定については科学者のみならず、社会 的反響も大きかったが、アメリカ化学誌の75周年記念号や、日本化学会誌50周年記念号に構造が示され、歴史的化合物ともなっている。また、伊豆半島、三 浦半島で採取したクロイソカイメンから強い抗腫瘍活性を示す物質を発見し、単離構造決定を達成した。ハリコンドリンBと命名した本物質には従来にない極め て特徴的な構造と、抗癌剤として有望な点から注目が集まっている。海洋生物由来の生物活性物質は極低濃度で顕著な生物活性を示すが、物質供給に問題が残っ ている。これらの物質は食物連鎖や共生による外因性代謝産物である場合が多く、真の生産生物の探索が重要であり、この方面からの研究を継続している。さら に、二枚貝であるタイラギによる食中毒の原因毒ピンナトキシン類の構造研究も多 くの科学者の興味を集めている。九州地方を中心としたタイラギによる食中毒はビブリオなどの細菌感染によると報告される一方で、神経毒の可能性があり疑問 視されていた。中国では、タイラギの中毒には神経毒が関係すると報告されている。そこで。中国の研究者との協同で原因毒ピンナトキシン類の構造を解明し た。従来にない新しい炭素骨格の物質であり、その生合成経路についても言及し注目された。本物質は極めて新しい型のカルシウムチャンネル活性化剤であり、 機能解明を目指している。最近では、海洋産無脊椎動物ヒラムシの共生渦鞭毛藻Symbiodinium sp.由来の、破骨細胞分化抑制活性を示すシンビオイミンや、サンゴに被覆して侵食する沖縄産カイメンTerpios hoshinota 由来の強力な細胞毒性物質ナキテルピオシンの単離に成功し、構造を決定している。いずれも化学合成を含めたその時代の最前線における化学的手法で達成できたものであり、困難な問題に挑戦し初めて得られた成果である。

自然界には未解決生物現象が数多く知られている。これらの生物現象を一つずつ有機化学の手法で解明するこ とにより従来にはない極めて特異的に作用する低分子化合物が発見できるものと期待される。現在、エゾトガリネズミの唾液麻酔成分、ベッコウバチの麻酔物質 について研究を進めている。モグラの仲間でも北海道に棲息するものは、巣穴に自分よりも大きなミミズや昆虫を噛むことによって麻酔し貯蔵する習性がある。 この原因物質、すなわち麻酔作用物質の解明を達成することを目標としている。物質探索の生物試験法はカルシウムチャンネル阻害作用である。構造を決定する ことにより、驚きと感動に満ちた知識として社会に還元したい。また、北米に生息するブラリナトガリネズミの だ液は有毒であり、自分より体の大きなカエルやネズミに噛み付いて捕らえる際に用いるとされる。最近、この毒がほ乳類の体内にあるのと似たタンパク質分解 酵素(プロテアーゼ)の一種であることを発見した。ほ乳類が持つ毒としては初の解明であり、医薬品開発に役立つ新たな生理機能の解明につながると期待され る。ベッコウバチの麻酔物質については、生物試験法に満足できる方法がなく苦慮していたが、最近よい方法を開発したので、ファーブルの「昆虫記」にも出て くる生物現象の解明が達成できると期待している。さらには保護色と関係するイカの表皮色素オモクローム,オニヒトデの摂餌誘引物質,過去60年来の難問花 芽形成ホルモン,サケの帰省ホルモン,サンゴ褐虫藻の共生誘導物質など歴史的課題がある。極めて切れ味のよい低分子は大きな生体高分子を動かし機能するの で,必ず生体機能解明に直結するであろう。このような魅力的な研究課題を設定し,若い研究者の夢と希望を満足させたいと考えている。



基盤研究(A)平成25年度〜29年度

「カイメン由来難培養性共生細菌に着目した新規物質探索研究」



基盤研究(S)平成21年度〜24年度(終了)

「巨大炭素鎖を持つ特異な天然有機分子の化学」

HP:http://www.bio.keio.ac.jp/labs/uemura/kiban-s/index.html


学術創成研究平成16年度〜20年度(終了)

「生態系ダイナミズムに着目した物質探索法」

HP:http://www.bio.keio.ac.jp/labs/uemura/gakujutsu/index.html


特定領域研究平成11年度〜平成14年度(終了)

「未解明生物現象を司る鍵化学物質」

HP:http://www.bio.keio.ac.jp/labs/uemura/toku-a/index.html