新規素材探索研究会設立趣意書

発起人代表 上村大輔


今日、分子生物学の分野における発展は目覚ましく、多くの生体内現象の機構が時空的に解明されつつあります。 しかるに、その各段階を制御する物質についての生物活性評価が遺伝子工学や細胞生物学等における成果を基盤として可能となってまいりました。 これに伴い医療の分野でも作用標的を定めた、副作用の少ない医薬品への期待が高まり、これまでにない新規な素材の開発が切望されるに至っております。 また、かかる新素材の発見は様々な生物現象の解明を飛躍的に進展させるとともに、内因的作用物質の出現を自然科学の歴史の中に確実に刻むこととなります。 しかし、期待の新規素材となり得る、切れ味のよい低分子性物質の探索研究は未熟で、温故知新の世界でもあります。

一方、自然界は様々な機能を有する天然分子の宝庫であり、天然物有機化学の分野では、 これまでに数多くの新規生物活性化合物を見い出してまいりました。さらにこの十余年の各種スペクトル測定機器の発展等に伴い、 その希少性、あるいは短寿命性等から従来構造解析がほとんど不可能であった物質の解明が急速に進んでおります。 また一方、人々の健康または安全への関心は高く、天然由来の安全な医薬品や食品への需要は増加しておりますが、 自然界から得られた生物活性を有する天然分子の医薬または機能性食品等としての有効利用は必ずしも進んでいるとは言えません。

このような状況の下、それぞれの分野で熟成してきた新規素材探索への機運を今こそ収束させ、 親密で効率の良い連繋を通じて基礎研究で得られた成果の利用を積極的に図り、真に人類の役に立つものとすることが必須であるとの考えに至りました。

「新規素材探索研究会」設立の趣旨は、種々の生物活性を有する新規素材の幅広い探索研究を推進し、 その有効利用を図ることにより人々の健康と安全に寄与することにあります。そのために、どのような機能を持つ物質をどこから探しだし、 如何に利用するかについて各分野の研究者が情報を交換し、討議する場を提供することが重要であります。目的達成のためには、 より広範な基礎研究の活性化、先端研究成果の確認と整理、応用開発への問題点の検討などが必要であり、それには、各分野の研究者、 更には企業において直接応用開発に携わっている研究者の緊密な連係が不可欠であります。種々の領域の研究者が、率直に議論を重ね、 国際的に評価される研究成果をまとめ、更には地球上のすべての人々の役に立つような利用を図ることを目指して努力することは、 きわめて意義深く、研究者に対する社会の要請であると存じます。

以上、新規素材探索研究会設立の趣意にご賛同いただき、各方面の皆様の御理解と、厳しい御指導、 そして暖かい御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

平成14年 4月 吉日

「新規素材探索研究会」設立発起人
上村大輔、矢澤一良、辻智子、河岸洋和、長田裕之