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研究分野:生物分子科学
キーワード:天然物有機化学


【研究代表者】

慶應義塾大学・理工学部・教授  上村 大輔

【研究期間】

平成21年度−25年度

 

【研究の背景・目的】

巨大炭素鎖有機分子とは、海洋生物独特の代謝産物で多くの酸素官能基を含む長い炭素鎖から成り立つ分子である。抗腫瘍性物質で誘導体が制がん剤として期待されているハリコンドリンBや、顕著な抗HIV活性を示すシンビオジノライドが例示されるが、存在意義や生物活性については未解明な部分の多い分子群である。本研究では、海洋生物が生産する巨大炭素鎖有機分子について、構造、形状、機能、生合成系等を総合的に研究することによりその性質を体系的に理解し、巨大炭素鎖を持つ特異な天然有機分子の化学として新しい分野の研究を展開することを目指す。

【研究の方法】

微細藻類等の海洋生物が生産する巨大炭素鎖有機分子について五つのサブテーマに従って、新規な物質群の創製、ライブラリーの構築、機能及び生物活性の解析、化学合成、生合成系遺伝子の解析を行い、詳細かつ網羅的な研究に取り組む。

  • 巨大炭素鎖有機分子の創製:微細藻類等が生産する巨大炭素鎖有機分子のMALDI-TOF マススペクトル等を用いた単離・精製手法を確立し、巨大炭素鎖有機分子ライブラリーを構築し安定的供給を実施する。また、巨大炭素鎖有機分子の形状解析の新規手法の開発に着手する。
  • 巨大炭素鎖有機分子と生体膜との相互作用:巨大炭素鎖有機分子の生産微細藻類における細胞内局在部位を共焦点レーザー顕微鏡等を用いて追求する。また、詳細な微細環境に着視し共生現象との関連を解析することで、これまで未解明であった巨大炭素鎖有機分子の役割を明らかにする。
  • 巨大炭素鎖有機分子の生物活性:獲得した巨大炭素鎖有機分子を広範な生物活性試験に供し特異的機能を見出す。また、新規分解反応及び化学合成によって獲得した分解フラグメントの生物活性評価を通じファーマコフォアの特定を試み、応用可能な機能性フラグメントの獲得を達成する。
  • 巨大炭素鎖有機分子の分子設計:巨大炭素鎖有機分子の構造情報を部分構造の化学合成を行うことで供給する。また、巨大炭素鎖有機分子を用いた新規分解反応の開発にも着手する。さらに、コンピューターシミュレーションによる溶液中での分子形状や運動、相互作用の様子を解析する。
  • 巨大炭素鎖有機分子の生合成系遺伝子解析:巨大炭素鎖有機分子の生合成系遺伝子のスクリーニングを行い、その生合成経路を明らかにする。さらに、生合成遺伝子発現クローンを用いた物質生産誘導や新規酵素反応の探索に着手する。

【期待される成果と意義】

巨大炭素鎖有機分子の形から機能までを総括的に明らかにすることで、未解明であった巨大炭素鎖有機分子の化学的および生物学的存在意義を明確化できる。また、巨大炭素鎖有機分子の構造・機能解明によって、精緻な化学構造解析法開発への寄与等、周辺学問分野の発展が期待できる。さらに、ライブラリー化の推進により他の研究者への供給が可能となり、展開応用面での波及効果が期待できる。

【当該研究課題と関連の深い論文・著書】

  • D. Uemura, M. Kita, H. Arimoto, M. Kitamura, Recent aspects of chemical ecology: Natural toxins, coral communities, and symbiotic relationships, Pure Appl. Chem., 81. 1093-1111 (2009) (in press)
  • M. Kita, N. Ohishi, K. Konishi, M. Kondo, T. Koyama, M. Kitamura, K. Yamada, D. Uemura, Symbiodinolide, a novel polyol macrolide that activates N-type Ca2+ channel, from the symbiotic marine dinoflagellate Symbiodinium sp., Tetrahedron, 63, 6241-6251 (2007)

 

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